整体院の広告費、これって多すぎ?少なすぎ? LTVの計算と広告費の割合
整体院・治療院の経営状況を知るための指標のひとつに、「LTV(Life Time Value)」というものがあります。日本語では「顧客生涯価値」という意味で、患者さんの初回来院から通院が終了するまでの売上の平均です。
それだけではなく、LTVの数値から、1人の患者さんあたりどのくらい広告費をかけるのが適切か、を計算することもできます。LTVの計算方法と経営に活かすためのノウハウを詳しく解説します。
自院のLTVを算出してみよう
LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)は顧客生涯価値と訳され、元々の意味は「1人の顧客が生涯のうちに企業にもたらす価値(売り上げ)」のことです。整体院においては、「1人の患者さんが初回来院してから、何回か通院して治療完了し、通院完了するまでの売上合計を平均したもの」と考えてよいでしょう。
ものすごく簡略化した例にしてみると、初回来院から通院完了までに1ヶ月通院して合計50,000円を支払った患者Aさんと、2週間通院して合計20,000円を支払った患者Bさんと、1回の治療だけで済んで5,000円を支払った患者Cさんがいた場合、LTVは25,000円になります。
LTVは顧客「生涯」価値なので、厳密には患者さんの生涯を通しての金額を測定しなくてはならないのですが、一度通院を終えた患者さんが2年後、5年後、はたまた10年後にまた来院する可能性を考えてLTVを算出するのは非常に大変ですし、現実的ではありません。
そこで、一般的に整体院のLTVは期間を1年間に区切り、「1人の患者さんが1年間にもたらした売上の平均」を計算するのが基本ルールです。
1年間の総売上を1年間に取り扱ったカルテ数で割ることでその年のLTVを計算することができます。
1年間の総売り上げ÷1年間のカルテ枚数
同じ患者さんが1年のうちに何回再来院したとしても、カルテ数は「1」としなくてはいけません。再来院のたびにカルテ数を増やしてしまうと新規の患者さんが来院した扱いになってしまい、正しいLTVの算出ができません。
1年間で計算するのが基本ルールですが、余裕があれば半年分のLTVも算出しておくとよいでしょう。
LTV から適切な広告費がわかる
LTVはただ単に1人の患者さんがいくら支払っているかを知るだけではなく、1人の新規患者さん獲得のために、どのくらい広告費をかけるのが適切か、を知る目安としても使うことができます。
LTVと広告費に一体何の関係があるのでしょうか?
たとえば、LTVが10,000円なのに1人集客のために5,000円の広告費を使うわけにはいきませんよね。しかし、LTVが10万円あるのならば、5,000円どころか広告費に1人あたり10,000円使っても構わないでしょう。LTVの金額によって、広告費として使える金額も大きく変わってくるのです。
それでは、LTVに対してどのくらいのパーセンテージまでならば広告費を使ってもよいのでしょうか。
私がこれまで4000院以上のコンサルティングをしてきた経験上、LTV の 10~20%くらいならば広告に費やしても整体院・治療院の経営は成り立つようにできています。先程のLTVが10万円の例でいうと、1人集客あたり2万円までならば広告費をかけられる計算です。
広告費がかかりすぎているのはもちろん要改善ですが、広告費が少なすぎるのももったいない状態です。自院のLTVを算出したら、ぜひそこから適切な広告費も計算して、実際にかけている広告費と比べてみてください。
計算結果をもとに集客・経営を見直そう
さて、自院のLTVを算出してみると気になるのが、他の整体院のLTVはどのくらいなのかということでしょう。
月の売り上げが100万~150万円、いわゆる”繁盛している”整体院のLTVはだいたい「25,000円~50,000円の間」です。この範囲内に入っていれば、おおむね問題ないでしょう。
LTVが25,000円に満たない場合は、リピート率の改善や分単価の向上などの経営改善が必要になってきます。
改善ポイント具体例1:リピート率を上げる
いくら新規患者が多くても、リピート率が低いとLTVは低くなります。快適な環境づくりやトークの改善など、「またこの院にお願いしたいな」と思わせる工夫が必要です。また、広告の写真やキャッチコピーに気合いを入れすぎて実際とのギャップが大きくなってしまうと、がっかりされる原因になるため注意しましょう。
改善ポイント具体例2:分単価の向上
分単価の向上のためには、値上げをする他に時短というアプローチがあります。治療院の場合、熟練して施術の腕が上がると、これまでよりも短い時間で同じ効果が出せるようになります。これにより空いた時間でより多くの患者さんに施術をすることができるので、時短をして1分あたりの単価をあげることで、LTVを高めることができます。
また、施術後に出していたお茶をやめて時短したり、施術後にその場でセルフケアの指導をするのではなく、セルフルケアを動画にしてLINE@で送ることで時短をする事例もあります。現在1人で運営しているならば、受付スタッフを雇って事務手続きを任せるのも時短になります。経営状況と相談して検討してみましょう。
LTVは経営状況を知る重要なバロメータのひとつ
1回の施術料金だけではなく、トータルでいくらいただいているのかを知ることで見えてくるものがあります。
LTVは、自院の集客・広告の状況が適切か、患者さんがどのくらい定着しているかを知るバロメータです。ぜひ経営改善にご活用ください!