機能訓練指導員とは|柔道整復師が働くメリット・将来のキャリア
機能訓練指導員は、介護保険法によって定められている職種のひとつです。機能訓練指導員になるためには、柔道整復師などの特定の国家資格を所有している必要があります。柔道整復師の有資格者の中には、機能訓練指導員として働くことを検討している人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、柔道整復師が機能訓練指導員として働く際の概要や仕事内容について解説します。機能訓練指導員の平均給与や将来性も紹介するため、機能訓練指導員の仕事に興味のある柔道整復師の人は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.機能訓練指導員とは
- 2.機能訓練指導員として働く柔道整復師の活躍場所・仕事内容
- 2.1.介護福祉施設
- 2.2.要介護者向け医療施設
- 3.機能訓練指導員の平均給与
- 4.機能訓練指導員として働く柔道整復師の将来のキャリア
- 5.まとめ
機能訓練指導員とは
機能訓練指導員とは、怪我や病気、老化などで日常に支障をきたしている人が自立した生活を送れるよう、運動機能の訓練やリハビリを行う職種です。介護保険法によって定められている職種のひとつとなるため、介護施設や医療施設が機能訓練指導員の主な勤務場所です。
機能訓練指導員は、誰でもなれる職種ではありません。身体に関する深い知識や専門性が求められるため、下記のいずれかの資格を所有している必要があります。
・柔道整復師 ・あん摩マッサージ指圧師 ・鍼灸師 ・理学療法士 ・作業療法士 ・言語聴覚士 ・看護師 ・准看護師 |
機能訓練指導員として働くにあたり必要な国家資格を取得するためには、専門学校や養成施設に数年通ったうえで国家試験に合格しなければなりません。「機能訓練指導員」という名称の資格があるわけではないため、混同しないように注意してください。
なお鍼灸師のみ、機能訓練指導員が在籍する施設において半年以上の実務経験を積むことが必須要件です。鍼灸師は、平成30年より機能訓練指導員の対象資格として追加されました。鍼灸師が追加された背景には、高齢者の増加などにより機能訓練指導員の需要が高まっていることがあります。
柔道整復師が機能訓練指導員になるメリット
柔道整復師の資格を所有していれば、機能訓練指導員として働くことができます。柔道整復師は、骨折や捻挫、打撲などの怪我を、整復法や固定法を用いて緩和させる仕事です。
柔道整復師が機能訓練指導員として働くメリットには、柔道整復師の知識や経験をリハビリ業務に活かせる点が挙げられます。柔道整復師は、体の構造を理解したうえで一人ひとりの症状に応じた施術を行います。機能訓練指導員の仕事においても、患者さんの様態に合わせた柔軟な対応ができるでしょう。特に、骨折や打撲などの怪我をした患者さんには、柔道整復師として培ったスキルを最大限に活かせます。
また、怪我や病気などにより心がネガティブになっている患者さんは少なくありません。そのため、機能訓練指導員は患者さんに寄り添いながら良好なコミュニケーションを取ることが重要です。柔道整復師として普段から患者さんと接することに慣れていれば、機能訓練指導員になってからも相手に安心感や好印象を与える接し方ができるでしょう。
機能訓練指導員として働く柔道整復師の活躍場所・仕事内容
機能訓練指導員として働く柔道整復師は、介護事業所で勤務することが多い傾向にあります。厚生労働省が実施した調査によると、通所介護事業所に勤務する機能訓練指導員のうち、柔道整復師の資格所有者は全体の10.7%です。
(出典:厚生労働省「(3)リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究(結果概要)」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000119060.pdf)
ここからは、機能訓練指導員の活躍場所や仕事内容を具体的に解説します。
介護福祉施設
機能訓練指導員が活躍する代表的な勤務場所が、介護福祉施設です。介護福祉施設のサービス形態としては、下記が挙げられます。
・デイサービス ・特別養護老人ホーム ・有料老人ホーム ・ショートステイ |
特に、デイサービスなどの通所介護事業所では、機能訓練指導員を1人以上配置するよう国から義務付けられています。そのため、通所介護事業所における機能訓練指導員の需要は高いと言えるでしょう。
また、介護福祉施設の中でも、柔道整復師が機能訓練指導員として活躍できる施設が、機能訓練型デイサービス(リハビリ特化型デイサービス)です。機能訓練型デイサービスでは、身体介護よりも機能訓練や介護予防に重点を置いているため、柔道整復師としての知識やスキルを存分に活かせます。
介護福祉施設では、日常生活動作などを改善するための訓練計画書の作成と訓練の実施が、機能訓練指導員の主な仕事内容です。ただし、施設によって業務内容は異なるため、レクリエーションや送迎など、介護分野の仕事を担当することもあります。
要介護者向け医療施設
要介護者向け医療施設も、機能訓練指導員が活躍する場所のひとつです。要介護者向け医療施設には、下記のサービス形態があります。
・介護療養型医療施設 ・病院併設型リハビリステーション ・介護老人保健施設 |
要介護者向け医療施設は、要介護度が高く、症状の重い患者さんが多いことが特徴です。そのため、機能訓練指導員は通常の福祉施設以上に手厚いケアが求められますが、その分患者さんの症状が改善したときのやりがいや達成感は大きくなります。さまざまな症状の患者さんに対応することは、スキルアップやキャリアアップにもつながるでしょう。
機能訓練指導員の平均給与
機能訓練指導員として働くにあたって、収入面が気になる人は多いでしょう。
厚生労働省の調査によると、令和2年度における「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士又は機能訓練指導員」の平均給与は、諸手当込みで358,560円です。また、介護従事者の中でも職員数が多い介護職員の平均給与は315,850円、生活相談員・支援相談員は343,310円となっています。そのため、機能訓練指導員の平均給与は他の介護従事者と比較すると高い傾向にあると言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02kekka.pdf)
上記により、機能訓練指導員は年収アップを目指している場合にもおすすめの職種だと言えます。しかし、実際の給与額や手当の有無などは事業所・施設によって異なるため、事前に募集情報などをきちんと確認しましょう。
機能訓練指導員として働く柔道整復師の将来のキャリア
機能訓練指導員として働く柔道整復師の将来的なキャリアには、下記の2つが挙げられます。
階段などステップアップをイメージさせる写真
・介護支援専門員を目指す
介護支援専門員は、介護を必要とする人が介護保険サービスを受けられるよう、ケアプランを作成したり自治体と連携したりする仕事です。患者さんの症状やニーズに合う計画を立てる必要があるため、柔道整復師としての知識や経験を活かせるでしょう。
介護支援専門員試験の受験資格を得るためには、柔道整復師をはじめとした特定の職種において、5年以上の実務経験が必須となります。そのため、介護支援専門員になることは容易ではありません。一方で高齢化などにより介護支援専門員の需要は高まると考えられるため、今後さらに貴重な人材となるでしょう。
・独立開業する
独立開業を目指すことも、将来的なキャリアのひとつです。柔道整復師としてのスキルや経験を駆使して事業をうまく軌道に乗せることができれば、大幅な年収アップを狙うこともできるでしょう。
また、通所介護事業所を新規開業する場合、自分自身が機能訓練指導員の配置基準を満たすことで、人件費などのコストを抑えることができます。特に開業当初は患者さんが集まらないこともあり、予算の余裕がないケースは少なくありません。人件費を削減することで、その分の予算を事業そのものに費やせることもメリットだと言えます。
このように、機能訓練指導員は将来性のある職種です。独立開業を視野に入れることもできるため、機能訓練指導員に興味のある柔道整復師の人は積極的にチャレンジしてみましょう。
まとめ
機能訓練指導員は、怪我や病気などによりリハビリが必要な人に対し、計画作成や機能訓練を行う介護業界の仕事です。柔道整復師が機能訓練指導員として働くことで、知識や経験をリハビリ業務に活かせるというメリットがあります。
また、機能訓練指導員は給与が高い傾向にあるため、年収アップを狙っている人にもおすすめです。機能訓練指導員として働く柔道整復師の将来的なキャリアには、介護支援専門員や独立開業があります。ぜひ選択肢のひとつとしてキャリアアップに活かしてください。