柔道整復師施術管理者研修とは|研修概要・注意点・受講後の手続き
柔道整復師施術管理者研修(施術管理者研修)は、施術管理者になるための要件として2018年4月に新たに受講が義務付けられた研修です。施術管理者研修では、主に保険請求・施術所管理について学びます。
当記事では、施術管理者研修の概要・施術管理者研修のプログラム・受講する際の注意点について詳しく解説します。
施術管理者研修受講後から開業までに行うべき準備や、必要となる手続きについてもまとめているため、独立開業を検討中の場合にも役立ちます。ぜひ参考にしてください。
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施術管理者研修とは
柔道整復師施術管理者研修(施術管理者研修)とは、療養費の受領委任を取扱う「施術管理者」になるための研修です。施術管理者研修の目的は、施術管理者が受領委任制度を介した支給申請を適切に行えるようになることです。
柔道整復師が行う施術のうち、保険が適用される施術は患者さんが自己負担分を支払い、残りの費用は「受領委任」という制度を介して各自治体(保険者)に申請を行います。
なお2018年4月より前は、施術管理者の要件は柔道整復師資格のみでしたが、2018年4月から「実務経験」と「施術管理者研修の受講」が要件として追加されました。施術管理者の要件が厳格化された理由としては、療養費の増加・不正請求や、施術の質の低下などが挙げられます。
(出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/171227-02.pdf)
また、実務経験の期間は、以下のように定められています。
施術管理者の届出期間 |
必要となる実務期間 |
2018年4月~2022年3月 |
1年間 |
2022年4月~2024年3月 |
2年間 |
2024年4月~ |
3年間 |
(出典:厚生労働省「【お知らせ】柔道整復師の資格を取得される皆さま、関係の皆さまへ」/https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/hokkaido/shinsei/shido_kansa/judo/documents/h300307oshirase.pdf)
施術管理者の届出期間によって、求められる実務経験が異なるため注意しましょう。
施術管理者研修の内容
施術管理者研修は、公益財団法人柔道整復研修試験財団が開催しています。
以下は、施術管理者研修の受講についてまとめた表です。
対象者 |
柔道整復師免許の保有者 |
受講費用 |
20,000円 |
研修内容 |
・職業倫理 ・適切な保険請求 ・適切な施術所管理 ・安全な臨床 |
実施期間・開催日 |
連続した土日・祝日の2日間程度 ※会場ごとに受講日程が決められています |
申し込み方法 |
柔道整復研修試験財団のWebサイトより予約 |
開催場所 |
北海道・東京・大阪・福岡・沖縄など ※2020年10月以降の研修はオンラインによる実施がメインとなっています |
受講者定員 |
約300~350名 ※50名を下回る場合は開催中止となります |
(出典:公益財団法人柔道整復研修試験財団「柔道整復師 施術管理者研修」/https://www.zaijusei.com/training_oparation_2020.html)
施術管理者研修の研修時間は16時間程度となります。2日間連続で受講できない人は、原則施術管理者研修への参加が認められないため、注意しましょう。
また、2020年10月以降はオンライン受講がメインとなっており、施術管理者研修受講後のレポートもオンライン上で作成・提出となっています。
施術管理者研修のプログラム
施術管理者研修では、「職業倫理」「適切な保険請求」「適切な施術所管理」「安全な臨床」の4つの分野を、午前・午後で4時間ずつ、2日間に分けて学びます。
以下は、各分野の主な研修内容です。
分野 |
科目 |
職業倫理 |
柔道整復師としての倫理 社会人・医療関係者としての責任や倫理・マナーなど コンプライアンス(法令遵守)の考え方 患者さんとの接し方 |
適切な保険請求 |
保険請求できる施術の範囲など
施術録の作成 支給申請書の作成 不正請求の事例 |
適切な施術所管理 |
医療機関などとの連携 医療事故・過誤の防止 事故発生時の対応 広告の制限 |
安全な臨床 |
患者さんの状況の的確な把握・鑑別 柔道整復術の適用の的確な判断・施術 救急救命・応急処置 患者さん・勤務者(スタッフ)への指導 |
(出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/171227-02.pdf)
1日目の施術管理者研修プログラムで職業倫理・適切な保険請求を、2日目のプログラムで適切な施術所管理・安全な臨床の講義を行います。
なお、施術管理者研修の講師は、医療者教育専門家・柔道整復師・医師などが担当しています。
施術管理者研修を受講する際の注意点
施術管理者研修を受講する際は、柔道整復研修試験財団が定めた優先度に応じて受講者が決定されるため、注意してください。
柔道整復師の数は、2018年末時点で73,017人に達しており、2008年からの10年間で約30,000人増加しています。
(出典:厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/kekka3.pdf)
柔道整復師が年々増加している背景から、施術管理者研修への申込が殺到し、研修が受講できない人も増加しました。そのため2020年4月から、施術管理者研修の申込方法が、先着順から優先度制に変更となっています。
以下は、優先度別に受講対象者となる人をまとめた表です。「優先度1」が最も優先度の高い対象者となります。
優先度
|
受講対象者 |
優先度1 |
・新卒者など、施術管理者研修導入時の特例対象者 ※受領委任の登録または承諾を受けており、研修修了証の写しを後日提出する旨の確約書を、地方厚生局へ提出していることが条件 |
優先度2 |
・すでに開業しているが、施術管理者がいないため、受領委任の取扱いを開始できない人 |
優先度3 |
・開業準備を実施している人 ※不動産の賃貸契約・不動産の売買契約・機材購入・設備購入のうち、いずれかを実施した人に限る |
優先度4 |
・現状の施術管理者が6か月以内に退職や産休などの予定があり、新たに施術管理者になることが必要な人 |
(出典:厚生労働省「(お知らせ)施術管理者研修を申し込まれる皆さまへ※令和3年1月加筆」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/200122_01.pdf)
なお、優先度ごとに「受領委任の取扱いの登録又は承諾について」「施術所開設届」などの写し・証明書類が必要となります。
施術管理者研修受講後から開業までに必要となる手続き
施術管理者研修受講後は、開業に関する手続きを計画的に進めることが大切です。受領委任申請や各機関への届出に漏れがあると、開業しても保険請求の取扱いができない恐れがあります。できる限り早めに書類をそろえ、各種手続きを進めましょう。
以下は、治療院の開業に必要となる主な手続き・申請先です。
必要な手続き |
申請先 |
主な必要書類 |
施術所開設届の提出 |
保健所 |
・施術所開設届 ・業務に従事する施術者の免許証の写し ・平面図と案内図 法人開設の場合は以下の書類が必要 ・定款 ・法人の登記簿謄本 |
受領委任契約に係る申請 |
地方厚生局 |
・確約書 ・柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出 ・誓約書 ・柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(同意書) ・施術管理者選任証明 ※開設者と施術管理者が異なる場合 |
労災保険の指定機関としての指定を受ける申請 |
労働基準局 |
・開設許可証 ・労災指定病院等登録(変更)報告書 ・労災保険指定医療機関指定申請書 ・知事届出事項に係る届出書の写し ・病院(診療所)施設等概要書 ・その他労災診療費の算定に際して必要な事項が記載された書類(地方厚生局へ届け出た施設基準に関する受理通知の写し) |
共済番号の取得 |
共済組合連盟・地方公務員共済組合協議会 |
・柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書 ・遵守事項確約書 ・柔道整復師免許証明書の写し ・返信用封筒 |
防衛省番号の取得 |
防衛省 |
・柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書 ・遵守事項確約書 ・柔道整復師免許証明書の写し ・返信用封筒 |
(出典:東京都福祉保健局「施術所(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう、柔道整復)の開設等」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/minamitama/youshiki/shinryoujotou/sejutsusho.html)
(出典:関東信越厚生局「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任に関する申し出」/https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/judo/index.html)
(出典:厚生労働省「労災保険指定医療機関になるための手続きについて」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000060772.html)
(出典:一般社団法人 地方公務員共済組合協議会「柔道整復療養費受領委任取扱いの申出について」http://www.chikyoukyou.com/judo/)
(出典:防衛省・自衛隊「柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る個人契約について」/https://www.mod.go.jp/j/proceed/service/judo/index.html)
各申請で用意する書類は多岐にわたるため、不備がないように確認を行いましょう。
まとめ
施術管理者になるためには、定められた期間の実務経験を積み、土日・祝日の連続する2日間で実施される施術管理者研修を受講する必要があります。施術管理者となることで、療養費の受領委任を取扱うことが可能です。
ただし、施術管理者研修の受講には優先度が設けられているため注意しましょう。
施術管理者研修受講後は、開業に向けて必要な書類を準備し、早い段階から手続きを行うことがポイントです。ここまで紹介した内容を参考に、施術管理者研修を受講して、施術管理者を目指してください。